耳の形の異常

耳介

耳・耳介は複雑なカタチをしています。そうしたこともあってか、様々な形の異常が生じるのかもしれません。

日本大百科全書(ニッポニカ)「耳介」の解説 慶應義塾大学のRauber-Kopsch解剖学

さまざまな耳介の変形

副耳

副耳は、耳の前や頬にイボ状に突起したもの(形成外科学会HP)、耳の穴の前やほほに皮膚におおわれたイボ状のできもの(小児外科学会HP)などと表現されます。

皮膚の突起ですが、その内部には軟骨が含まれます。

発生する部位で多いのは耳珠(耳の穴の前方の隆起に隣接した軟骨を含む有茎状突起です。
重複した耳珠( Duplicated Tragus )とも称されます。

治療は内部の軟骨を含めて切除します。



埋没耳(耳輪埋没症)

耳介の上部が側頭に埋まっています。指で引き出すことが出来ますが、手を離せば戻ってしまいます。

耳の裏側の耳介横筋、耳介斜筋といった筋肉の位置異常が原因とで耳介軟骨が皮下に引き込まれています。

手術しない治療(埋没耳の矯正治療)

信州大学の広瀬、松尾らは、歯科矯正用の金属線と医療用カテーテルを組み合わせた手作りの矯正装置を考案して、耳介に装着することで、1歳以下なら、早い時期から始めるほど短期間で埋没が矯正できることを発表しました。

耳介にうまくフィットして、埋没した耳介を引き出して維持できればよいので、様々なタイプの自作スプリントが工夫されてきました。筆者も、そうした手法をとっていました。また簡易的には、耳介上部を引き出したら、戻らないように(皮膚に優しい種類の)紙ばんそうこうを貼っておけば、矯正効果があります。

ただし、耳介上部をおおう皮膚が足りない場合、折れ癖が非常に強い場合は、矯正効果が薄いようです。

また、折れ曲がった軟骨をしっかり直すには、手術治療が必要かと思います。

廣瀬、松尾らの矯正装置とその効果
「耳介形態の異常」廣瀬毅、松尾潔 信州医誌 1985

https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/record/4844/files/Shinshu_med33-6-02.pdf

埋没耳の手術治療

乳児期でないと、矯正治療は難しいので、幼時期になっていると手術治療となります。

筆者は昭和大学の鬼塚先生の発表された術式を習いました。下図のように埋没した耳介の上方でZ形成を行います。また、埋没変形した耳は、前方に倒れたような軟骨変形もありますので、広くはがした耳介後面から軟骨にナイロン糸で引き上げています。埋没耳の前方上方の埋もれている部位では、皮膚が不足しているのでZ形成で延長します。


Plast Reconstr Surg. 1978 Nov;62(5):734-8. doi: 10.1097/00006534-197811000-00013.

A method for repair of cryptotia T Onizuka, S Tokunaga, K Yamada

https://journals.lww.com/plasreconsurg/Citation/1978/11000/A_METHOD_FOR_REPAIR_OF_CRYPTOTIA.13.aspx

埋没耳の矯正治療を開発した信州大学の廣瀬先生、松尾先生は、手術方法も発表しています。

こちらの方法でも手術をしてきました。鬼塚のZ形成と大きな耳介後面皮弁をたくさん経験していますので、実際に廣瀬先生らの手技は、親近感がありました。というのは、鬼塚法のZ形成の△の一つを、余っていると考えて切りとると廣瀬らの手術での皮膚の処理とかなり似ています。

考え方は異なるはずですが、合理的な術式を追求すると最後は似てくるのかもしれません。