こどもの頭のかたち
頭のかたちを直す”形状誘導ヘルメット”
ヒトの頭のかたちは、個人差もありまた、時代によりかたちの傾向があるようです。
日本人は現在、短頭であり前後があまり長くありません。
武将の伊達政宗公の墓所である瑞鳳殿は戦災で消失してしまい、再建が行われたときにお墓を発掘調査されています。昭和四九年です。その時にご遺族の許可を得て頭蓋骨のレプリカを作成していて、容貌を復元したそうです。
政宗公の頭の形状、一般的に「頭の鉢」と表現、は前後に長いものだったのです。
現代人ではまず見られない才槌(サイヅチ)頭と言われる「長頭」でした。
中世ではこのような「長頭」が一般的で、現代人は「過短頭」、いわゆる絶壁頭です。
形状誘導ヘルメット
あたまの形を直すために、赤ちゃんにオーダーメードのヘルメットを作る治療があります。
この方法はアメリカで広まり、米国のヘルメットメーカーが日本にも進出しています。どうやら、もともとアメリカでは頭のかたちが良いことに価値が置かれていたとききます。ですから、赤ちゃんをうつ伏せ寝にして、頭を圧迫しない育児も普通でした。
ところが、乳児突然死症候群の調査が進んで、これは、うつぶせ、あおむけのどちらでも発症するが、寝かせる時にうつぶせに寝かせたときの方が SIDS(乳児突然死症候群) の発症率が高いことが分かって、仰向けに寝かせることが推奨されるようになりました。そうすると、後頭部は圧迫されるので、以前よりあたまの変形が増えてしまい、アメリカでは治療が進んだようです、
また、国立成育医療研究センターでは、2011年より「あかちゃんの頭のかたち」外来開設しています。成育医療では、ヘルメットも作製しますが、それ以前に育児習慣の見直し、積極的な体位変換、タクティールケア<理学療法のうち「タッチケア」が総称であり「タクティールケア」は1960年代にスウェーデンで看護師らにより低出生体重児を対象に始められたタッチケアを指す(日本スウェーデン福祉研究所のホームページより)>などを行うようです。
成育医療センター元副院長で形成外科医の金子先生から、いろいろと教えていただきました。この項目では、聞いた話や調査した内容をまとめてみました。
出産するとき、赤ちゃんのあたまは形を変える
頭から産まれる正常分娩では、赤ちゃんは妊婦さんの狭い産道を通って生まれてくるので、ひじょうに窮屈です。赤ちゃんの頭蓋骨は、母体の仙骨側の頭蓋骨が反対側の頭蓋骨の下に重なり、変形します。
(児頭の応形機能と医学的には呼ばれています)
ベテラン助産師さんによると、およそ35年くらい前は、初産婦から生まれた子は頭蓋骨の応形と産瘤で長い頭だった。(産瘤は子宮が児頭を圧迫するために、児頭の先進部に起こる腫れです)
それが、20年前頃になると、丸い頭の新生児が増え、産後に恥骨結合離開によって痛くて歩けなくなる産婦が増えたそうです。母親の骨盤周囲の筋肉は、かがむ姿勢の農作業などをしなくなってますから、現代人は鍛えられていない。そして、妊娠中はホルモンの働きで出産に向けて、女性の骨盤の結合がゆるみます。そして、骨盤周囲の筋肉が弱い現代人は、ゆるんだ骨盤が歪み易くなっているようです。すると、内臓下垂や子宮も変形、いびつになり、胎児もおされて窮屈な姿勢になります。
「生まれた時から、頭も顔もゆがんでいる赤ちゃんが増えている。珍しくない。
しょっちゅう見る」 助産師さんの話
(ブログ魔女のひとりごと・・・元病院助産師さんの渡部信子さま・・・より、一部引用改変)
こうして生まれた赤ちゃんは、多くの子が頭の変形を伴っています。ただし、時間がたつと改善していきます。
育児習慣の見直し・・・赤ちゃんの向き癖、抱き癖を考える
いつも同じ向きに寝かせれば、そちらばかり圧迫されるので、向きをかえてあげて平均化すれば良いわけです。
抱っこする向きを変える
授乳する手を変える
頭の平坦な部位の反対側を向くようにする
ベッドの向きを変える
赤ちゃんが興味をそそるモノをおく
ガラガラ、ビデオなど
チャイルドシート(車)赤ちゃん用シートに長く置かない
国内で使用できるヘルメットは
Aimet アイメット:これのみ国産メーカーです。
日本の赤ちゃんの頭や日本の気候に合わせた素材で作られている。ヘルメットの内部に特殊な低反発クッションを使用して、頭部を包み込むように固定し、変形を抑えたい部分の固定、へこんだ部分の成長をうながすための空間の確保の両方を叶えることができるとされています。
ミシガン頭蓋形状矯正ヘルメット
アメリカのダンマープロダクツが製造し、メディカルユーアンドエイが販売
このヘルメットは国立成育医療センターが国内に初導入しました。
ミシガン式ヘルメットは、医療機関が主導して、ヘルメットの形状を決めています。治療中のフォローも医療機関で行います。医療行為の一環となっています。
日本形成外科学会から厚生労働省「医療ニーズの高い医療機器の早期導入に関する検討会」へ申請し、2014年5月に厚生労働省より選定され、2018年4月に医薬品医療機器総合機構から頭蓋形状矯正ヘルメットとして初めてクラスII医療機器として承認されました。
それが、製造販売会社に任せるタイプとは大きく異なる点と考えられます。病院で計測した頭の形態のデータをアメリカに送信し、ヘルメットの製作は米国内の工場となります。病院では、訓練を受けた装具士が装着の実際を行うものです。そして、医師もフォローしていきます。
国立成育医療センター、赤ちゃんのあたまのかたちクリニック(東京)
高槻病院(大阪府高槻市)等
スターバンド
日本でも事業展開しています。国内の取り扱いは、株式会社AHS Japan Corporationです。
複数の医療機関と提携しています。ただし、ヘルメットを製作するのは会社になります。
千葉県こども病院の脳神経外科が、千葉県内での提携病院となっています
お子さんの頭の変形が強いとき
変形した頭はみんなヘルメット被せればいい、ではありません
国立成育医療センターの「あたまの形外来」での診療経験を聞いたので、ご紹介します。(かなり前に聞いた数値ですので、今よりもだいぶ少ない時期です)
あたまの形を気にして外来に受診した赤ちゃんは501人。
そのなかで、30人は頭蓋骨早期癒合症などの疾患がありました。
変形性、位置性の斜頭は471人です。
姿勢を注意したり、理学療法をした患者さんが266人
そして、ヘルメットを使ったのは205人でした。
ヘルメット治療は185人が終了して、治療が中断されたのは10人でした。
あたまの形を気にして受診した赤ちゃんで、
実際にヘルメット治療の適応となったのは、40%ほどでした。
変形した頭が実は早期癒合症などの疾患だった場合も6%程あったことになります。