体幹の変形
ここでは、胸部、腹部での形成外科でよくみる疾患を扱います
漏斗胸
漏斗胸は、胸の中央部下に、へこみがある変形である。
発生頻度は報告によりばらつきがある。0.2-0.7%といわれ、男性のほうが多い。
また、時に同一家系にみられて遺伝的な要素も推測されている。
漏斗胸変形の原因は、肋骨・肋軟骨の過剰成長による変形といわれている。
乳幼児期から、漏斗胸変形が発見されることが多く、成長とともに変形が強まってくると考えられる。
ただし、乳児はもともと胸壁が柔らかいために、呼吸によって凹んだものを漏斗胸と勘違いすることもあり(偽性漏斗胸)、成長をみながら変形の形態が直るかどうかを見ていく必要がある。
胸郭の陥凹変形によって、肺や心臓など胸の中にある臓器は、位置が変わってくるので、心電図検査で以上と判定されることがある。
しかし、肺活量が減るとか、心臓が圧迫されて機能が悪い、というような高度な障害を来すことは稀と考えられる。
また、小児期には障害は少ないが、長じるにしたがって、とくに本人が老人になると、呼吸器の症状が強くなることもある。また、漏斗胸から猫背になりやすく、姿勢の悪さがしばしばみら
10代の漏斗胸
英語版ウィキペディアより借用画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pectus_excavatum.jpg
漏斗胸の手術治療
従来の手術治療法は、胸骨挙上術、胸骨反転手術などが行われていた。胸に大きな皮膚切開が必要であり、手術する年齢によっていは、再発もみられた。
ナス法の登場
アメリカの医師 Donald Nussにより考案された術式=ナス法手術では、胸の両脇の2−3cmほどの皮膚切開から胸腔鏡下に漏斗胸陥没部を持ち上げて、ステンレス製、チタン製のバーを挿入して挙上を維持する、という新たな術式である。
バーは2年以上経ってから、抜去します、
変形が左右対称に凹んでいる場合は、とくによい結果が得られる。
千葉県こども病院では、1999年にナス法が国内で保険適用となった頃から、この術式を導入している。
極端に変形が強い場合や、陥凹の左右差が大きい場合は、通常のナス法だけでは、十分な矯正は難しいこともあり、肋軟骨の切離などを追加するなどの工夫を加える場合もある。
バーで胸郭を挙上することは、たとえ非対称な漏斗胸でも陥凹はかなり改善されるが、若干の非対称が残る。
胸の横からの手術するために胸の正面は無傷で、出血も少なく、手術時間も比較的短い手技である。
ただし、肺や心臓といった重要な臓器の横をかすめて、金属バーを挿入しますので手術の危険性が無いわけではない。出血や術後感染症などの合併症も報告されてる。
バー挿入用の側胸部切開
左右の胸に3cm程度の切開(場合によりみぞおち部分の小切開を加えます)から弯曲した金属のプレートを心臓・肺と胸骨・肋軟骨の間に挿入し、持ち上げます。
形成外科学会の疾患解説ページより
白黒画像はCT検査の画像です(海外のWikimedia Commonsより借用)
画面右側の胸腔内に見える臓器は心臓です。その周囲は、空っぽでなく肺なのです。
NUSS法手術では、胸腔鏡を使って肺と心臓を確認しながらバーを挿入していきます。
胸部には肺と心臓があります。画像は信州大学呼吸器外科サイトから
臍ヘルニア 臍突出 でべそ
臍から、腹腔内の腸などが突出して臍が膨らんだ状態を、臍ヘルニアという。
臍ヘルニアの治療は,圧迫療法と手術がある。圧迫療法は臍ヘルニアを腹部に還納して,おへそに綿球やスポンジを当て、テープ固定するといいった方法である。
乳児の皮膚は弱いこともあり、テープによる皮膚かぶれが20~40%あったと報告されている。
手術する場合、その時期はヘルニアが自然治癒する可能性が低くなる2歳以降である。
しかし、大きな臍ヘルニアの場合、ヘルニアが改善しても、臍の皮膚が伸びて余ってしまうことがあり、これがいわゆるでべそです。外科手術で余分な皮膚を切除して、上向きのいい形の臍に直す形成手術の適応となる。手術では、臍ヘルニアのなごりもあり、ヘルニア門も縫合閉鎖している。
昭和大学の鬼塚先生は臍部に星形のデザインで余分な皮膚切除をして、かたちとして臍の相がよいとされる上向きな臍窩が出来るように工夫した。
図はその変法である。
雑誌形成外科増刊号;形成外科の治療指針2019 臍ヘルニア、臍突出症 鈴木啓之、石垣達也 より
日本形成外科学会サイトより引用’
鬼塚変法では、5個の皮弁をデザインしているが、上下と左右の4弁として簡易化している。いずれのデザインでも適宜皮膚を切除しています、